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2022.10.24 子犬コラム 子猫コラム

ペットの殺処分問題の現状|殺処分を減らす対策も解説

ペットの殺処分問題の現状|殺処分を減らす対策も解説

犬や猫を飼う際は、ペットを最後まで適切に面倒を見ると覚悟する必要があります。一方で、飼い主がいなかったり、捨てられたりして殺処分されてしまう犬や猫は多く、どうすればペットの殺処分数を減らせるのか、考え続けなければなりません。

当記事では、ペットの殺処分問題の現状とともに、殺処分を減らすために行われている取り組みについて解説します。犬や猫の殺処分ゼロを目指し、意識を変えるところから始めていきましょう。

 

1. ペットの殺処分問題の現状

環境省によると、令和2年度はおよそ72,000頭の犬や猫がセンターに引き取られており、そのうち23,000頭以上が殺処分されています。ペットの殺処分数は年々減っているものの、今でも多くの犬猫たちが殺処分されている状況です。また、殺処分されるペットの約8割を猫が占めています。

引き取られる犬猫の多くは所有者不明の保護犬や保護猫などですが、中には所有者によりセンターへ持ち込まれるケースもあります。犬よりも猫のほうが飼い主による持ち込み数が多く、令和2年度は動物愛護センターに引き取られた猫の約23%が飼い主により持ち込まれました。「犬(猫)が高齢になり面倒がみれない」「しつけができない」「可愛くないから」「飽きてしまった」などの無責任な理由で手放してしまうケースもあります。

ペットの殺処分数を減らすために何ができるか、改正された動物愛護法をもとに具体的な解決策を考えていく必要があります。

出典:環境省「全国の犬・猫の引取り数の推移」

出典:公益財団法人動物環境・福祉協会Eva「犬猫の引取り数と殺処分数」

 

2. ペットの殺処分問題に関わる法律

平成25年より動物愛護法が改正され、新たに「終生飼養」について明示されました。終生飼養とは、ペットを飼うものやペットを販売する業者等が、その動物の命が終わるまで適切に飼育することです。ペット所有者は動物たちを飼育放棄することなく、ペットが寿命を迎えるまで面倒を見続ける責任があります。

また、飼い主が愛護センターにペットを持ち込んでも、理由が終生飼育に反するものだった場合、自治体はペットの引き取りを拒否できるようになりました。ペットの終生飼育の明記は、平成25年以降の犬猫の引き取り数の減少と殺処分数減少につながっています。

出典:岡山市「保健所で終生飼養に反する理由での引き取りができなくなりました。」

他にもペットショップで販売できるペットの月齢に制限を設けたり、マイクロチップの装着を義務づけたりするなど、動物愛護法は少しずつ改正されています。ペットの殺処分数をさらに減らすためにも、今後の改正に期待が高まります。

【動物愛護法の改正内容の一例】

  • 終生飼養
  • マイクロチップ装着の義務化
  • 生後56日を経過しないペットの販売を制限
  • ペットの販売を事業所に限定
  • 適正に飼育されないペットの繁殖防止を義務化
  • 適正に飼育されていないと判断した場合、指導や助言が可能
  • 動物虐待に対する罰金の引き上げ

出典:環境省自然環境局総務課 動物愛護管理室「改正動物保護管理法の概要」

 

3. ペットの殺処分を減らすための対策は?

マイクロチップ装着や不妊去勢手術、保護団体による地域猫活動などさまざまな取り組みにより殺処分数は年々減少しています。殺処分数の更なる減少につなげるために、どのような対策が行われているのでしょうか。ここでは、実際に行われている取り組みをいくつか紹介します。

 

3-1. マイクロチップの埋め込みを行う

令和4年6月より、販売される犬や猫にマイクロチップを装着することが義務づけられました。マイクロチップは直径2mm、長さは8mmから12mmの円筒形をしており、獣医師によって専用の注射器で犬猫の体内に装着されます。

出典:東京都福祉保健局「犬、猫へのマイクロチップ装着に関する制度について(令和4年6月から施行)」

マイクロチップを装着し、所有者の情報を登録することによって、ペットの身元の証明ができるようになります。ペットの犬や猫が迷子になったり、災害などで離ればなれになったりしても、マイクロチップの情報から所有者を見つけ出すことが可能です。マイクロチップは迷子のペットを減らし、さらに飼育放棄を防ぐ効果もあるため、殺処分減少につながると言えるでしょう。

出典:環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室「犬と猫のマイクロチップ情報登録について」

 

3-2. ペットには避妊去勢手術を行う

避妊去勢手術は全身麻酔を用いて卵巣や子宮、精巣を摘出する手術で、望まない繁殖を防ぐことができます。犬の場合は生後6か月から10か月の間、猫の場合は生後4か月から1歳になるまでの間に発情期を迎えるため、手術については早めに検討しておくことが大切です。

不妊去勢手術は繁殖を防ぐ以外にも、卵巣や精巣の病気予防やマーキングの防止、発情期の情緒不安定を抑えることもできます。また、手術費用の一部を補助する自治体もあるため、ペットの健康を守り適切な飼育を行えるよう、避妊去勢手術は前向きに考えましょう。

 

3-3. 野良猫の繁殖制限を行う

犬猫殺処分数の大多数は猫が占めています。猫は1年に数回出産が可能で、一度の出産で4〜8頭の子猫を産む非常に繫殖力に優れた動物です。1頭の猫からわずか1年間で20頭に増えることもあり、増えすぎた野良猫たちによる糞害や騒音、アレルギーや感染症被害など、さまざまな問題を抱えやすいです。

野良猫を減らし、今生きている野良猫と地域が共存するために保護団体が主体となった「地域猫活動」が行われています。

地域猫活動の主な取り組みとしてあげられるのがTNRです。Trap(捕まえる)、Neuter(手術する)、Return(戻す)の頭文字を取った略語で、野良猫に避妊去勢手術をほどこした後に地域に放す取り組みです。術後の猫の耳はV字にカットされ、耳の形が桜のようにみえるため「さくら耳」とも呼ばれることもあります。

繁殖制限を行って野良猫の数を徐々に減らし、殺処分数減少につなげていくことが今後の課題です。

 

3-4. 飼い主・国民の意識を向上させる

2021年現在の全国のペット飼育数はおよそ1,605万頭であり、コロナ禍での在宅時間が増え、ペット需要も高まっていることが考えられます。

出典:一般社団法人 ペットフード協会「令和3年 全国犬猫飼育実態調査」

新しい家族としてペットを大切にしている家庭も多い一方、無責任な理由で飼育放棄をしてしまう人や、さまざまなトラブルを引き起こしてしまう人がいるのも事実です。ペットと正しく共存していくためには、飼い主や国民の意識を向上させる必要があります。

行政の取り組みとして、動物愛護団体や動物保護センター主催の講演会やペットとふれあえるイベントの開催、また、動物福祉に関する普及啓発活動も行われています。

出典:環境省_人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト「いのちの教室」の取り組みについて」

さまざまな活動を通して、ペットの正しい飼育法やマナー、終生飼養の意識を飼い主へ根付かせることで、殺処分数の減少につながります。

 

3-5. 譲渡数を増やす

自治体やボランティア団体から、飼い主のいないペットを譲渡してもらう里親制度が広まっています。里親になるためには、保健所や愛護センターなどでの引き取ったり、譲渡会へ参加したりする他に、里親サイトなどでも里親の募集を探すことができます。飼い主のいないペットを引き取ることで、殺処分数の減少に直接的につながるとして環境省からも推奨されています。

2020年現在ではセンターに引き取られたペットの譲渡・返還率が68.5%と過去最高を記録していますが、まだまだ約半数の犬猫が殺処分されているのも事実です。殺処分されるペットを減らすためには、譲渡数をさらに増やしていく必要があります。

出典:環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」

譲渡される犬や猫は、生体そのものは無料の場合が多いものの、譲渡にあたってはさまざまな条件が定められているケースが多いでしょう。

【里親になるための条件】

  • 譲渡を希望する保健所がある都道府県に居住していること
  • 18歳以上であること
  • 60歳以上や一人暮らしは後見人が指名できること
  • 適正、終生飼育が可能であること
  • 同居家族全員が飼育に賛成していること
  • 飼育が許可されている住居に住んでいること
  • 保健所が実施している講習に参加すること
  • 譲渡後は不妊去勢手術を受けさせること

引き取りの再発防止のため、自治体によっては履歴書の提出を求められたり、事前に家庭訪問を行ったりなど身元や飼育環境の確認を徹底しているところもあります。

動物を迎える際に、ペットショップからではなく保護犬・保護猫を受け入れるようにすることで、殺処分数減少につながります。

 

まとめ

殺処分されるペットの数は減少傾向にあるものの、未だに23,000頭以上の犬猫が殺処分されているのが現状です。殺処分問題を解決するためには、国民一人ひとりが動物愛護の気持ちを持ち、飼い主が終生飼育や犬猫へのマイクロチップの装着など、飼育にあたっての責任を果たすことが大切です。

また、犬猫を迎える際にはペットショップから購入するだけではなく、保護犬や保護猫を引き取るという選択肢もあります。保護犬や保護猫を引き取ると、小さな命を救うことにもつながります。